京都市地球温暖化対策条例 解説

京都市地球温暖化対策条例 解説

 京都市地球温暖化対策条例の解説をします。本条例は京都府地球温暖化対策条例(府温対条例)、京都府再生可能エネルギーの導入等の促進に関する条例(府再エネ条例)と関連しています。京都市に所在のある事業所は、いずれの条例も遵守する必要があります。
 市条例の届出で府条例の代替となる定めや、府条例と同基準または厳しい基準を市条例で定めているなど、各条例は関連していますので、対比しながら解説します。また、原則府条例に同様の記載がある条文等は、市条例の条文列記、解説等をしていませんので、府条例の解説を確認してください。

 本解説においては、理解の容易さを主眼とし、適宜文言・表の省略・変更等を行っています。実際の運用においては、必ず法律、条例等の原文を確認ください。

第1章 総則
第2条第1項第7号 特定事業者
(条文省略)

<解説>
 特定事業者の要件は府温対条例と同じです。府温対条例の解説を参照ください。

第4章 事業者及び市民等による地球温暖化対策
第2節 特定事業者の義務
(環境マネジメントシステムの導入等)
第32条 特定事業者は,本市の区域内に存する事業所のうち次の各号のいずれかに該当するものにおいて,環境マネジメントシステムを導入し,当該環境マネジメントシステムにおいて決定した目標を達成するための取組を推進しなければならない。
(1) 温室効果ガスの排出の量が最も多い事業所
(2) 主たる事業所
(3) その他環境マネジメントシステムの導入による温室効果ガスの排出の量の削減の効果が高い事業所として別に定めるもの
2 前項の規定により環境マネジメントシステムを導入した特定事業者は,毎年度,別に定めるところにより,次に掲げる事項を記載した報告書を市長に提出しなければならない。
(1) 環境マネジメントシステムの名称
(2) 環境マネジメントシステムにおいて決定した目標を達成するための取組に関する事項
(3) その他市長が必要と認める事項
3 市長は,前項の規定による報告があったときは,速やかに,その旨及びその内容を公表しなければならない。

<解説>
 本条に基づく取組、報告等を行えば、府温対条例に基づく同種の取組等を行ったとみなされます。
 本条例で認められている環境マネジメントシステムは府温対条例と同じです。しかしKESについては府温対条例では「スタンダード」に限定されていますが、本条例では限定はありません。
 その他、事業所規定、提出期日等は府条例と同様です。

(温室効果ガスを排出しない新車等の導入)
第33条 特定事業者は,その事業の用に供するため,過去に道路運送車両法第58条第1項に規定する自動車検査証の交付を受けたことがない自動車で別に定めるもの(以下「新車」という。)の購入等をしようとするときは,別に定める期間に購入等をする新車のうち次に掲げる自動車に該当するものの台数の当該期間に購入等をする新車の合計台数に対する割合が別に定める割合以上となるようにしなければならない。
(1) 電気自動車その他の温室効果ガスを排出しない別に定める自動車
(2) 電力併用自動車その他の温室効果ガスの排出の量が相当程度少ない別に定める自動車
2 特定事業者は,新車の購入等をしたときは,別に定めるところにより,次に掲げる事項を記載した報告書を市長に提出しなければならない。
(1) 購入等をした新車の合計台数
(2) 購入等をした前項各号に掲げる自動車に該当する新車の台数
(3) その他市長が必要と認める事項
3 前条第3項の規定は,前項の報告について準用する。

<解説>
 本条は、市独自の定めです。
 本条の自動車とは、普通自動車,小型自動車及び軽自動車のうち,人の運送の用に供する自動車で乗車定員が10人以下のものまたは、貨物の運送の用に供する自動車で,車両総重量が3.5トン以下のものです。特定事業者は、報告書を新車の購入等をした翌年度の7月31日までに提出する必要があります。

第3節 特定排出機器販売者の表示等の義務
第34条 温室効果ガスの排出の量が相当程度多い別に定める機械器具(以下「特定排出機器」という。)を店頭において販売する者(以下「特定排出機器販売者」という。)は,当該店頭の見やすい場所に,別に定めるところにより,エネルギー消費効率(エネルギーの消費量との対比における特定排出機器の性能として別に定める方法により算定した数値をいう。以下同じ。)に関する情報を適切に表示しなければならない。
2 特定排出機器販売者は,特定排出機器を購入しようとする者に対し,当該特定排出機器のエネルギー消費効率について説明しなければならない。

<解説>
 本条の機械器具は,次に掲げるもので未使用のものです。府温対条例と異なり、電気冷凍機が含まれていません。

 ①エアコンディショナー
 ②照明器具(卓上スタンド用蛍光灯器具を除く。)
 ③テレビジョン受信機
 ④電気冷蔵庫
 ⑤電気便座

 表示は,縦5.5センチメートル以上,横5センチメートル以上の書面を掲示する必要があります。大きさの指定は府条例にない市独自の定めです。

第4節 自動車販売事業者の説明等の義務
(自動車販売事業者による温室効果ガスの排出の抑制)
第35条 本市の区域内において自動車の販売を業とする者(以下「自動車販売事業者」という。)は,新車を購入しようとする者に対し,その販売する新車に係る自動車環境情報(自動車に関する温室効果ガスの排出の量その他の別に定める事項をいう。)を説明しなければならない。
2 自動車販売事業者は,温室効果ガスを排出しない新車又は温室効果ガスの排出の量が相当程度少ない新車の提供に努めなければならない。
3 自動車販売事業者は,毎年度,別に定めるところにより,温室効果ガスを排出しない新車又は温室効果ガスの排出の量が相当程度少ない新車の販売の実績を記載した報告書を市長に提出しなければならない。
4 第32条第3項の規定は,前項の報告について準用する。

<解説>
 全ての自動車販売事業者は、いわゆるエコカーの新車販売実績報告書を市長に提出しなければなりません。提出の義務は、市独自の定めです。

第5章 事業者排出量削減計画による温室効果ガスの排出量の削減
(事業者排出量削減計画書、報告書、評価)
第37~41、43、44条
(条文省略)

<解説>
 事業者排出量削減計画書、報告書の記載項目、目標値、提出日、評価の仕組み等府温対条例の内容と同様です。ただし、重点対策としてDO YOU KYOTO?プロジェクトへの参画が項目に加えられています。その他は府温対条例の解説を参照ください。計画書、報告書は市に提出することで、府への提出は免除されます。

第6章 エネルギー消費量等報告によるエネルギー消費量の削減
(エネルギー消費量等報告書の提出)
第45条 事業の用に供する建築物で,その用に供する部分の床面積の合計が別に定める面積以上であるものの所有者(特定事業者を除く。以下「準特定事業者」という。)は,毎年度,当該年度の事業活動に伴うエネルギーの消費量について,事業活動に伴うエネルギーの消費量に係る報告書(以下「エネルギー消費量等報告書」という。)を作成し,当該年度の翌年度の別に定める日までに市長に提出しなければならない。
2 エネルギー消費量等報告書には,次に掲げる事項を記載しなければならない。
(1) 準特定事業者の氏名及び住所(法人にあっては,名称及び代表者名並びに主たる事務所の所在地)
(2) 事業活動に伴うエネルギーの消費量の実績
(3) 事業活動に伴うエネルギーの消費量を削減するために実施した措置の内容
(4) 前3号に掲げるもののほか,市長が必要と認める事項

<解説>
 準特定事業者となる床面積は、1,000㎡以上です。準特定事業者は本条例独自の定めです。報告書の提出期限は5月31日です。

第7章 建築物に係る地球温暖化対策
第2節 建築物排出量削減計画による温室効果ガスの排出量の削減
(建築物排出量削減計画書の提出等)
第49条 温室効果ガスの排出の量が相当程度多い別に定める建築物(以下「特定建築物」という。)の新築等をしようとする者(以下「特定建築主」という。)は,建築物排出量削減指針に基づき,建築物に係る温室効果ガスの排出の量の削減に係る計画書(以下「建築物排出量削減計画書」という。)を作成し,当該新築等に係る工事に着手する前の別に定める日までに市長に提出しなければならない。
2 建築物排出量削減計画書には,次に掲げる事項を記載しなければならない。
(1) 特定建築主の氏名及び住所(法人にあっては,名称及び代表者名並びに主たる事務所の所在地)
(2) 特定建築物の名称及び所在地
(3) 特定建築物の概要
(4) 特定建築物に係る温室効果ガスの排出の量を削減するために実施しようとする措置の内容
(5) 第57条の規定に基づく同条の建築環境総合性能評価システムによる評価の結果
(6) 前各号に掲げるもののほか,市長が必要と認める事項
3 第1項の規定により建築物排出量削減計画書を提出した特定建築主(以下「計画書提出特定建築主」という。)は,特定建築物の新築等に係る工事が完了するまでの間に,前項各号に掲げる事項に変更が生じたときは,別に定める届出書に,変更後の建築物排出量削減計画書を添えて,速やかに市長に提出しなければならない。ただし,別に定める軽微な変更については,この限りでない。
4 市長は,第1項の規定による建築物排出量削減計画書の提出及び前項の規定による届出に係る変更後の建築物排出量削減計画書の提出があったときは,速やかに,その旨及びその内容を公表しなければならない。

<解説>
 本条に基づく届出を行えば、府温対条例の同種の届出は不要です。届出記載内容、期限等は府温対条例と同様です。

第3節 特定建築物における地域産木材の利用等
(特定建築物における地域産木材の利用)
第53条 特定建築主は,特定建築物又はその敷地内における土地に定着する工作物に別に定める量以上の地域産木材(別に定めるものに限る。以下同じ。)を利用しなければならない。

<解説>
 本条の定めは府温対条例と同様です。「地域産木材」とは京都府域産木材のことです。地域産木材の認定機関は府温対条例より少数です。市長が指定する機関は以下の二つです。

 第1号 京都市域産材供給協会の京都市木材地産表示制度
 第2号 一般社団法人京都府木材組合連合会の京都府産木材認証制度

(特定建築物における再生可能エネルギー利用設備の設置)
第54条 特定建築主は,特定建築物又はその敷地に,再生可能エネルギー利用設備で,特定建築物からの温室効果ガスの排出の量の削減に寄与するものとして別に定める基準に適合するものを設置しなければならない。

<解説>
 本条例による計画書の届出を行えば、府再エネ条例の届出は不要です。特定建築物には太陽光発電等の再生可能エネルギー利用設備を設置する必要があります。ただし、日射量が不十分な場合や歴史的風土保存区域内等のやむを得ない事由がある場合は設置が免除されます。設備基準とやむを得ない事由の概要を下表に示します。本条文は府再エネ条例の代替として、京都市地域のみに適用されます。

第4節 建築物環境配慮性能の表示
(建築環境総合性能評価システムによる評価)
第57条 特定建築主は,環境への配慮に係る特定建築物の性能について,建築環境総合性能評価システム(環境への配慮に係る建築物の性能を評価する制度のうち,市長が定めるものをいう。以下同じ。)による評価を行わなければならない。

<解説>
 本条は市独自の規定です。特定建築主は、CASBEE京都による評価、工事期間中の評価の表示、広告への評価の表示、届出、販売時の建築物環境配慮性能の説明をする必要があります。

「CASBEE京都」は全国的に普及している「CASBEE(キャスビー:建築環境総合性能評価システム)」をベースに、京都が目指すべき環境配慮建築物を適切に評価・誘導できるよう項目の重点化や見直しを行い、京都独自のシステムとして策定したものです。 

(建築士による再生可能エネルギー利用設備の設置の促進)
第63条 建築士は,別に定める建築物の新築等に係る設計を行うときは,当該設計の委託をした建築主に対し,再生可能エネルギー利用設備の設置に関する情報について,別に定める事項を記載した書面を交付して説明しなければならない。
2 前項の規定は,当該建築主から,同項の規定による説明を要しない旨の意思の表明があった場合には,適用しない。

<解説>
 本条文は府再エネ条例に代替する市の規定です。建築士は、10㎡以上の床面積の建築物を設計するときは、建築主へ再生可能エネルギー利用設備に関する情報について説明義務があります。府再エネ条例は300㎡以上のため、本条例の方が厳しい規制となります。

第6節 緑化重点地区内の建築物に係る緑化等の義務
(特定緑化建築物等の緑化等)
第65条 緑化重点地区(都市緑地法第4条第2項第8号に規定する地区をいう。)において,その敷地面積が別に定める面積以上である建築物の新築又は別に定める改築をしようとする者(以下「特定緑化建築主」という。)は,当該建築物及びその敷地(以下「特定緑化建築物等」という。)に,それらの面積に応じて別に定める面積以上の緑化施設(植栽,花壇その他の緑化のための施設(可動式のものにあっては,別に定める規模以下のものを除く。)及び敷地内の保全された樹木並びにこれらに付属して設けられる園路,土留めその他の施設(当該建築物の空地,屋上その他の屋外に設けられるものに限る。)をいう。以下同じ。)を設けなければならない。ただし,建築物の構造又は敷地の状況により緑化施設を確保することが困難であると市長が認めるときは,この限りでない。
2 特定緑化建築主は,前項の規定にかかわらず,その建築物に太陽光発電装置を設けるときは,緑化施設の面積に太陽光発電装置の面積を加えた面積をもって同項の規定により設けるべき緑化施設の面積とすることができる。
3 第1項の緑化施設及び前項の太陽光発電装置の面積は,別に定める方法により算定するものとする。

<解説>
 本条例に基づく緑化計画書の届出を行えば、府温対条例の同種の届出は不要です。京都市の緑化重点地区は市街化区域全体です。その他の条件、期限等は府温対条例と同様です。

 当事務所では、京都市地球温暖化対策条例に関する届出代理、法務コンサルティングを行っております。お気軽にご相談ください。

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