京都府環境を守り育てる条例 解説

京都府環境を守り育てる条例 解説

京都府環境を守り育てる条例 解説

 京都府環境を守り育てる条例(以下、本条例)の解説をしていきます。
 環境法は、法で定める規制基準より厳しい規制基準を条例で定めている場合が多く、環境規制の全体像を把握するには都道府県等の条例を確認する必要があります。ここでは主に工場等の中小企業事業者向けに、上位環境法と対比しながら、本条例、規則及び関連する京都市の条例等を解説します。他都道府県、市町村の条例であっても本条例と比較しながら確認すれば、理解の助けになると思います。

 本解説においては、理解の容易さを主眼とし、適宜文言・表の省略・変更等を行っています。実際の運用においては、必ず法律、条例等の原文を確認ください。

(定義)
第1条第4項
この条例において「特定工場」とは、ばい煙又は汚水を多量に排出する工場で規則で定めるものをいう。

<解説>
 「特定工場」とは、ばい煙又は汚水を多量に排出する工場です。具体的には規則別表第1、第1項と第2項の二つです。

①(第1項) ばい煙に係る施設を設置する工場で、当該工場に設置されているすべてのばい煙に係る施設を定格能力で運転する場合において使用される燃料の量を重油の量に換算したものの合計量が1時間当たり2kℓ以上のもの
②(第2項) 汚水に係る施設を設置する工場で、当該工場から公共用水域に排出される1日当たりの平均的な水の量が2,000㎥以上のもの

 特定工場に指定される条件は、ばい煙施設の定格能力と排出水の量だけです。ばい煙の実際の燃料消費量や排出水設備の定格能力は関係ありません。
 下記表は重油換算して2㎘となる代表的な燃料の目安の量を規則別表1から抜粋、計算してまとめたものです。他の燃料については規則を確認してください。

第1条第5項 
この条例において「特定施設」とは、工場又は事業場に設置される施設のうち、ばい煙、粉じん、汚水、騒音、振動又は悪臭を排出し、発生し、又は飛散させる施設(特定工場に設置されるものにあっては騒音、振動又は悪臭に係るものに限る。)で規則で定めるものをいう。

<解説>

 「特定施設」とは、ばい煙、(一般、特定)粉じん、汚水、騒音、振動又は悪臭を排出し、発生し、又は飛散させる施設です。特定工場においては、ばい煙、(一般、特定)粉じん、汚水に係る施設を設置していなくても、それらの規制基準を課されます。本条例で特定施設は、関連法令に加えて指定されています。

 特定施設は、規則別表第2の1~7に定められています。
 表は、最初に上位法の規定、次に京都府独自に定めた施設を上げています。両者は重複していません。上位の各法律よりかなり多くの施設が特定施設に定められています。上位法に定められている施設は、それぞれの規則等を確認ください。
 別表2は長大な表ですが、下表にその概要を示します。

 続いて7つの表をそれぞれ示します。

別表第2 4汚水に係る施設(1)の具体的施設は下記の通りです。

第1条第6項 
この条例において「ばい煙」とは、次に掲げる物質をいう。
(1) 燃料その他の物の燃焼に伴い発生する硫黄酸化物
(2) 燃料その他の物の燃焼又は熱源としての電気の使用に伴い発生するばいじん
(3) 物の燃焼、合成、分解その他の処理(機械的処理を除く)に伴い発生する物質のうち、カドミウム、塩素、 ふつ化水素、鉛その他の人の健康又は生活環境に係る被害を生じるおそれがある物質で規則で定めるもの

<解説>
 本条例では、大気汚染防止法で定める上記有害物質を含む下記の物質が有害物質に指定されています。

(規制基準の設定)
第33条
知事は、特定工場及び特定施設を設置する工場又は事業場(以下「特定工場等」という。)における事業活動に伴って生じるばい煙等の排出、発生又は飛散の量等について、特定工場等の設置者が遵守すべき基準(以下「規制基準」という。)を規則で定めなければならない。

<解説>
 特定工場及び特定施設を設置する工場又は事業場別に遵守すべき規制基準の一覧表は下記のとおりです。特定工場については、当該特定施設を設置していなくても、その当該施設に係る規制基準が課せられます。例えば、第1項の特定工場はばい煙の施設に係る特定工場ですが、粉じん、汚水等の施設を設置していなくても、粉じん、汚水の規制基準を遵守する必要があります。下記表を参照ください。

 実際の規制基準は、規則の別表4に定められています。別表4も長大な表のため、各項目に区切って解説します。

別表4 1ばい煙に係る規制基準(硫黄酸化物)

<解説>
 ばい煙に係る規制基準は、硫黄酸化物、ばいじん、有害物質でそれぞれ定められています。
 硫黄酸化物の規制基準は、排出濃度を規制する量規制(K値規制)と地域全体での排出量を規制する総量規制に分かれます。量規制は一般排出基準とより厳しい特別排出基準に分かれます。日本全国で、必ずこのどちらかの規制基準が適用されます。京都府では、京都市と山城地区(宇治市、城陽市、向日市、長岡京市、八幡市、京田辺市、乙訓郡大山崎町及び久世郡久御山町の区域)が特別排出基準の地域に、それ以外が一般排出基準の地域に指定されています。一般排出基準でも地域ごとに規制値が異なり、北部3市(福知山市、綾部市、舞鶴市)とそれ以外の地域で異なります。

 総量規制は、地域全体での排出許容総量を算出し、そこから規制基準値を定めます。総量規制が適用されるのは一定の規模以上の工場、いわゆる特定工場です。特定工場には、本条例で定める特定工場と大気汚染防止法で定める特定工場があります。それぞれに課される排出基準は異なり、前者に課されるのが都道府県ごとに定められる上乗せ排出基準、後者がより厳しい大気汚染防止法による総量規制基準です。本条例で定める特定工場の条件は、京都市・山城区域以外で重油換算燃料消費量2㎘。大気汚染防止法で定める特定工場は京都市・山城区域で重油換算燃料消費量0.3㎘です。量規制、総量規制いずれも都市部、大規模施設ほど規制が厳しくなります。

 本条例では、上記の上乗せ排出基準しか定められていません。自らの事業場にどの規制基準が課されるかは、関係法令、条例等を確認する必要があります。その際、確認する項目は、自らの業種、ばい煙排出施設の定格能力、地域です。下表に京都府におけるばい煙の硫黄酸化物に係る規制基準の概要を示しますので、参考にしてください。

別表4 1ばい煙に係る規制基準(ばいじん)

<解説>
 ばいじんの規制基準は大気汚染防止法で定められており、一般排出基準、特別排出基準、上乗せ排出基準があります。このうち京都府では、全国に適用される一般排出基準と、本条例による特定工場のみに適用される上乗せ排出基準のみ定められています。上乗せ排出基準に地域の指定はありません。
 本条例の上乗せ排出基準を簡単に説明すると、以下の通りとなります。


 ・大気汚染防止法に定められているばい煙発生施設に関しては、一般排出基準を適用
 ・本条例に定められているばい煙に係る施設については、一般排出基準のうち最も緩い値(0.5g/㎥)を適用
 ・排出ガス量の多さに応じ、定数を乗じて規制値を緩和する


 下表に京都府におけるばい煙のばいじんに係る規制基準の概要を示しますので、参考にしてください。

別表4 1ばい煙に係る規制基準(有害物質)

<解説>
 有害物質の規制基準は大気汚染防止法で定められており、一般排出基準、上乗せ排出基準、総量排出基準(窒素酸化物のみ)があります。このうち京都府では、全国に適用される一般排出基準と、本条例による特定工場のみに適用される上乗せ排出基準のみ定められています。上乗せ排出基準に地域の指定はありません。有害物質の規制基準は、本条例による「特定工場」に限らず、「特定施設を設置する工場又は事業場」に適用されます。一般排出基準が先に適用され、それ以外の施設に対して上乗せ基準が適用されます。

 本条例にはばい煙に係る有害物質として水銀と有機化合物(VOC)が含まれていますが、上位法の大気汚染防止法では水銀と有機化合物は有害物質とは別枠で規定されています。つまり、本条例の水銀と有機化合物はばい煙の施設で発生したものだけが規制され、大気汚染防止法での水銀と有機化合物はばい煙発生施設に限らず、それぞれに指定された施設で発生したものが規制されます。

 下表に有害物質、水銀、有機化合物、それぞれの規制基準の概要を示します。

別表4 2一般粉じんに係る規制基準

<解説>
 一般粉じんは、大気汚染防止法では構造並びに使用及び管理に関する基準のみが定められており、規制基準は定められていません。しかし本条例では5項目の規制基準が定められています。地域の指定はありません。また、大気汚染防止法の一般粉じん発生施設にはこの表の規制基準は適用されません。本条例の特定工場は、一般粉じんに係る施設を設置していなくても、本規制基準が適用されます。

別表4 3特定粉じんに係る規制基準

<解説>
 特定粉じんの規制基準は、大気汚染防止法と同一です。本条例の特定工場は、一般粉じんに係る施設を設置していなくても、本規制基準が適用されます。

別表4 4汚水に係るに規制基準

 汚水に係る規制基準の適用区域は下表の通りです。適用区域は、Aは淀川水系、Bは他府県(滋賀県、大阪府・兵庫県)の河川、Cは日本海、Dはその他に流入する公共用水域です。Aの方ほど規制基準が厳しくなります。これらに排出水を排出する工場又は事業場が規制対象です。

 水質汚濁防止法、本条例ともに汚水に係る規制基準は健康項目、生活環境項目、汚濁負荷量の3つがあります。水質汚濁防止法では全国に課される一律排水基準、都道府県独自の上乗せ排水基準、地域指定(東京湾、伊勢湾、瀬戸内海)されている総量規制基準が定められています。京都府では、上乗せ基準、総量規制基準いずれも定められています。

別表4 4汚水に係る規制基準(その1)(健康項目)

<解説>
 汚水に係る規制基準(その1)(健康項目)は、有害物質に係る項目です。汚水に係る特定施設を有する工場又は事業場で、その工場等から公共用水域(河川等)に排出水を排出する場合は、遵守する必要があります。排出水を下水に排出したり、タンクに入れて業者が引き取る場合は適用されません。
 参考に、水質汚濁防止法の排水基準を右欄に掲示しています。水質汚濁防止法より厳しい基準(上乗せ排水基準)は、シアン化合物、有機リン化合物、六価クロム化合物です。
 水質汚濁防止法と本条例との規制基準の概要を下表に示します。本条例による上乗せ排水基準は、水質汚濁防止法に加えて対象施設が増え、規制を受ける事業場が増加します。

別表4 4汚水に係る規制基準(その2)(生活環境項目)

<解説>
 汚水に係る規制基準(その2)(生活環境項目)は、汚水の汚れに係る項目です。汚水に係る特定施設を有する工場又は事業場で、その工場等から適用区域の公共用水域(河川等)に排出水を排出する場合は、遵守する必要があります。
 参考に、水質汚濁防止法の排水基準を右欄に掲示しています。質汚濁防止法より厳しい基準(上乗せ排水基準)は、生物化学的酸素要求量(BOD)、化学的酸素要求量(COD)、浮遊物質量(SS)、ノルマルヘキサン抽出物質含有量(鉱油類含有量)、亜鉛含有量、ニッケル含有量です。
 備考3のうち京都府に関わる代表的な湖沼、海域を下表に示します。これら以外の他府県の湖沼に流入する場合であっても、規制対象となります。

 水質汚濁防止法と本条例との規制基準の概要を下表に示します。本条例による上乗せ排水基準は水質汚濁防止法に加えて規制項目と対象施設が増え、規制を受ける事業場が増加します。水質汚濁防止法では排水量50㎥/日以上が生活環境項目の規制対象ですが、本条例ではさらに厳しく30㎥/日以上が規制対象です。

別表4 4汚水に係る規制基準(その3)(汚濁負荷量)

<解説>
 汚水に係る規制基準(その3)(汚濁負荷量)は、汚水の汚濁の程度に係る項目です。水質汚濁防止法では東京湾、伊勢湾、瀬戸内海に限った規制ですが、本条例では適用区域の公共用水域(河川等)に排出水を排出する場合は、遵守する必要があります。
 水質汚濁防止法と本条例との規制基準の概要を下表に示します。規制する項目は、水質汚濁防止法と本条例で異なります。本条例では、特定工場(別表第1の2の項・汚水)しか規制されません。
 生物化学的酸素要求量(BOD)は主に流れている河川等の水域の基準として使用され、化学的酸素要求量(COD)は主に海や湖沼の滞留している水域の基準として使用されます。

別表4 5騒音に係る規制基準

<解説>
 騒音規制法では、町村部においては都道府県知事が、市部においては市長が、規制区域、規制基準を定めます。本条例で京都府が定める騒音規制対象地域の町村は、大山崎町、久御山町、井手町、宇治田原町、精華町のみです。上記表の用途地域の区分、規制基準は京都府が定めたものです。
 京都市では、上記表のうち第4種区域の工業専用地域を除いて京都府の規制基準と同一です。工業専用地域では騒音規制基準は適用されません。他の多くの市で京都市と同一の規制基準を定めています。
 下表に騒音に係る規制基準の概要を示します。騒音規制基準は次の振動規制基準と同様、町村部の方が対象施設、用途地域の数が増えるため、厳しい規制となります。よってばい煙・汚水と異なり、町村部の方が厳しく、都市部の方が緩い規制になります。

 騒音規制法の特定建設作業に係る定めは本条例にはありませんが、「特定建設作業に伴つて発生する騒音の規制に関する基準」(厚生省・建設省告示1号)、「特定建設作業に伴つて発生する騒音の規制に関する基準に基づく区域の指定」(京都府告示第626号)に定められていますので、参考のため下表に示します。
 特定建設作業を伴う建設工事を施工しようとする者は、作業の開始の日の七日前までに、市町村長に届け出なければなりません。

別表4 5振動に係る規制基準

<解説>
 振動規制法も騒音規制法と同様に、町村部においては都道府県知事が、市部においては市長が、規制区域、規制基準を定めます。本条例で京都府が定める振動規制対象地域の町村は、騒音規制法と同一です。上記表の用途地域の区分、規制基準は京都府が定めたものです。
 京都市では、上記表のうち第2種区域の工業専用地域を除いて京都府の規制基準と同一です。工業専用地域では騒音規制基準は適用されません。他の多くの市で京都市と同一の規制基準を定めています。
 下表に振動に係る規制基準の概要を示します。

悪臭

 悪臭については、本条例では届出は規定されていますが、規制地域、規制基準は定められていません。参考のため、悪臭防止法による特定悪臭物質の規制基準、各市町村の規制地域を下表に示します。また、京都市では特定悪臭物質の他に臭気指数による規制も京都市悪臭防止対策指導要綱に定められています。臭気指数の指導基準も下表に示します。

(汚水の地下浸透の禁止)
第35条 特定工場等の設置者は、土壌及び地下水の汚染を防止するため、当該特定工場等から規則で定める物質を含む汚水を地下に浸透させてはならない。

<解説>
 地下浸透禁止は、特定工場の設置者と、特定施設を設置する工場又は事業場の設置者、いずれにも課されます(両者合わせて「特定工場等」)。また有害物質を取り扱っているかどうか、汚水の特定施設を設置しているかどうかにも関わらず、全ての「特定工場等」設置者に課される規制です。
 水質汚濁防止法の有害物質と本条例の地下浸透禁止物質の対比表を下に示します。表中の備考の値は、検定した場合に表中の値以上の値が検出されるときに当該物質が含まれるものとみなすもので、許容値ではありません。

(届出等)
第36条から第48条(条文省略)

<解説>
 第36条から48条は届出等に関する規定です。本条例では届出等は特定工場、特定施設(ばい煙、粉じん、汚水)、特定施設(騒音、振動、悪臭)の3種類に区分できます。悪臭は、悪臭防止法に対する上乗せ条例がありませんので、本条例では定められていませんが、悪臭防止法による届出は必要です。
 届出の概要は、特定工場・特定施設(ばい煙、粉じん、汚水)の設置・施設変更は60日前に届出が必要です。特定工場・特定施設(ばい煙、粉じん、汚水)の前記以外届出と、特定施設(騒音、振動、悪臭)の各種届出は30日前、または30日以内の届出が必要です。
 本条例に基づく申請及び届出は、正本とその写し2通を添えてしなければなりません。
 下表に本条例における届出の概要を示します。

(燃料使用基準)
第49条 知事は、規則で定める特定工場等における燃料の使用が規則で定める燃料の使用の基準(以下「燃料使用基準」という。)に適合しないと認めるときは、当該特定工場等の設置者に対し、期限を定めて、燃料使用基準に従うべきことを勧告することができる。
2 知事は、前項の規定による勧告を受けた者がその勧告に従わないときは、期限を定めて、当該燃料使用基準に従うべきことを命じることができる。

<解説>

 上記内容は、特定工場でない工場及び事業場の硫黄酸化物の排出を抑えるための規制です。排出(アウトプット)する方ではなく、燃料(インプット)の方の規制です。本条例に規定されていない地域は、大気汚染防止法に定められていますので、下表に掲載します。
 また、同様の燃料に対する規制で「季節による燃料の使用に関する措置」が大気汚染防止法に定められていますので、下表に掲載します。
 前出の排出基準、総量基準(アウトプット側の規制)も参考のため、下表に掲載します。
 これら規制により、京都府の全ての地域、全ての規模の工場等に対して、硫黄酸化物に関する何らかの規制がかかることになります。

揮発性有機化合物の排出の抑制)
第50条 揮発性の高い有機化合物で規則で定める物質を使用し、貯蔵し、又は出荷する事業者で規則で定めるものは、当該物質による大気の汚染を防止するため、当該物質の排出を抑制するための措置を講じるものとする。
2 知事は、前項に規定する措置が適切に講じられるようにするため、当該物質の排出を抑制するための適正な設備の設置等に係る指針を定めるものとする。

<解説>
 大気汚染防止法第十七条の四に揮発性有機化合物の排出の規制等の排出基準が定められていますが、それを補う抑制措置です。下表に対象物質、対象設備を示します。本条文に係る届出、排出基準等の定めはありません。

(化学物質の管理)
第51条 特定工場等の設置者は、人の健康又は生活環境に係る被害を生じさせるおそれがあると認められる化学物質で別に定めるものについて、その排出、発生又は飛散を抑制するため、当該物質を適正に管理するものとする。
2 知事は、前項に定める物質の排出等を抑制するため、当該物質を適正に管理するための指針を定めるものとする。

<解説>
 指針に定められている129の排出抑制化学物質(別表1)の年間の使用量または製造量が一定以上(別表2)の排出抑制管理事業所は、施設の点検等をすることが定められています。下に「京都府化学物質適正管理指針」と別表1、2を示します。本条文に係る届出、排出基準等の定めはありません。

(事故時の措置)
第52条 特定工場等の設置者は、事故により当該特定工場等からばい煙、粉じん、汚水若しくは悪臭を発生させ、又は発生するおそれを生じさせたときは、直ちに、その事故について応急の措置を講じるとともに、その事故の復旧に努めなければならない。
2 特定工場等の設置者は、事故により当該特定工場等からばい煙、粉じん、汚水又は悪臭を発生させたときは、直ちに、規則で定めるところにより、その事故の状況等を知事に届け出なければならない。
3 知事は、第1項に規定する事故が発生した場合において、当該事故に係る特定工場等の周辺の区域における人の健康若しくは生活環境に係る被害が生じ、又は生じるおそれがあると認めるときは、当該特定工場等の設置者に対し、その事故の拡大又は再発の防止のため、必要な措置を講じるべきことを求めることができる。

<解説>
 事故によりばい煙、粉じん、汚水若しくは悪臭を発生させたときは、知事に届け出る必要があります。

(公害防止管理者の設置)
第53条 特定工場の設置者は、当該特定工場における公害の発生源を管理するとともに、公害の発生原因及び発生状況を常時監視し、公害の発生を防止するため、規則で定めるところにより、公害防止管理者を選任しなければならない。
2 前項の規定により公害防止管理者を選任した者は、選任の日から30日以内に、その氏名を知事に届け出なければならない。これを変更したときも、同様とする。

<解説>
 本条例では特定工場のみ公害防止管理者を設置する必要があります。本条例での公害防止管理者は、公害防止組織法による公害防止管理者(大気(第一種~第四種)、水質(第一種~第四種)、特定粉じん、一般粉じん)で、京都府の公害防止管理者講習の課程を修了したものから選任しなければなりません。騒音・振動、ダイオキシン類の公害防止管理者は対象外です。公害防止管理者講習は毎年度1回実施されています。

(測定の義務等)
第54条 ばい煙、粉じん又は汚水を排出する特定工場等の設置者で規則で定めるものは、規則で定めるところにより、当該排出に係るばい煙、粉じん又は汚水の量及び濃度を測定し、その結果を記録しておかなければならない。

<解説>
 ばい煙、粉じん、汚水に限り測定義務があります。排出されない項目については、測定を省略することができますので、全ての項目を測定する必要はありません。測定記録表は3年間保存しなければなりません。ばい煙、粉じんの測定頻度(別表9)、汚水の測定頻度(別表10)を下に示します。
 排出水の汚濁負荷量の測定頻度については、本条例では特定工場についてのみ定められています。特定工場以外の工場等については、水質汚濁防止法に基づき京都府告示で定められていますので、下表に告示の内容を示します。

(拡声機の使用の制限)
第56条 何人も、規則で定める場合を除き、病院、学校等の周辺その他の特に静穏の保持を必要とする区域として規則で定める区域においては、商業宣伝を目的として拡声機を使用してはならない。
2 何人も、規則で定める場合を除き、商業宣伝を目的として、航空機(航空法(昭和27年法律第231号)第2条第1項に規定する航空機をいう。以下同じ。)から機外に向けて拡声機を使用してはならない。
3 何人も、前2項に規定する場合のほか、商業宣伝を目的として拡声機を使用する場合は、その使用時間、使用方法、音量等に関して規則で定める事項を遵守しなければならない。

<解説>
 商業宣伝を目的とした拡声器の使用は、学校、保育所、病院・診療所(患者を入院させるために施設を有するもの)、図書館、特別養護老人ホーム、幼保連携型認定こども園の周囲50mではできません。また、航空機からの拡声器使用は、京都市の区域以外で正午から午後1時まで可能です。その他拡声器を使用できない場合は、幅員4m未満の道路、地上10以上の位置、50m以内の2か所同時放送で、毎時15分以上の休止時間が必要です。
 下表に音量の定めを示します。

(夜間営業等の騒音の制限)
第57条 夜間における騒音の防止を図る必要がある区域として規則で定める区域において、飲食店営業その他の営業であって規則で定めるもの(以下「飲食店営業等」という。)を営む者又は規則で定める作業を行う者は、午後10時から翌日の午前6時までの間においては、規則で定める基準を超える騒音を発生させてはならない。
2 深夜における騒音の防止を図る必要がある区域として規則で定める区域において、飲食店営業等(騒音によって周辺の人の健康又は生活環境に係る被害が生じないものとして規則で定めるものを除く。)を営む者は、午後11時から翌日の午前6時までの間においては、規則で定める音響機器を使用してはならない。
3 知事は、前2項の規定により区域を定めようとするときは、関係市町村長の意見を聴かなければならない。これを変更し、又は廃止しようとするときも、同様とする。

<解説>
 飲食店、作業の具体例は下記の通りです。

・飲食店営業等:飲食店営業,喫茶店営業,カラオケ装置を使用させて営む営業
・作業:屋外の資材,土砂置き場で機械(クレーン、バックホウ等)を使用して行う作業

 騒音の基準は前出の騒音に係る規制基準と同じですが、学校等の周囲における基準値の減少はありません。音響機器とは、カラオケ装置、音響再生装置、拡声装置(マイク等)です。下表に飲食店営業等及び作業の騒音の制限に係る基準を示します。

(特定事業所設置者等による環境管理の推進)
第61条 特定工場の設置者及び規則で定める事業所の設置者(以下「特定事業所設置者」という。)は、その事業の実施に当たって自主的に環境の保全及び創造に関する方針及び目標を定め、その方針及び目標を達成するための計画を策定して実施し、その実施状況を点検して必要な見直しを行う一連の取組(以下「環境管理」という。)を推進しなければならない。
2 知事は、環境管理の実施を推進するため、指針を定めるものとする。
3 特定事業所設置者以外の事業者は、環境管理の推進に努めるものとする。

<解説>
 特定事業所とは、常時使用する従業員の数が300人を超える事業所です。製造業では、大企業にあたります。環境管理の代表例は、エコアクション21やISO14001などの環境マネジメントシステムです。特定事業所の設置者は、環境管理を推進しなければなりません。

(環境管理総括者の設置)
第62条 特定事業所設置者は、環境管理を円滑に推進するため、規則で定めるところにより、環境管理を総括する者(以下「環境管理総括者」という。)を選任しなければならない。
2 前項の規定により環境管理総括者を選任した者は、選任の日から30日以内に、その氏名を知事に届け出なければならない。これを変更したときも、同様とする。

<解説>
 環境管理総括者は、環境方針などを策定できる役員等から選任しなければなりません。エコアクション21における代表者、公害防止組織法における公害防止統括者と同様の役割です。環境管理総括者に資格は不要です。

(両罰規定)
第110条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、第98条の2から前条までの違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対して各本条の罰金刑を科する。

<解説>
 違反行為があった場合は、従業員等の行為者だけでなく、会社等の法人も罰金刑を科されます。

 当事務所では、京都府環境を守り育てる条例に関する届出代理、法務コンサルティングを行っております。お気軽にご相談ください。

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